むかし、淵野辺のカイコを飼っている農家で、そのいちばん忙しいときに、働き手の嫁さんが急に熱を出して寝込んでしまいました。
困った農家のおじいさんは、近くの皇武神社の神主さんのところに頼みに行きました。神主さんは「お宅の嫁さんが一日も早くよくなるよう、特別にご利益のあるお札をあげよう」といって帰しました。
次の朝、不思議なことに、神主さんの娘が手伝いに来てくれたのです。娘はよく働き、家中がぱっと明るくなりました。間もなく嫁さんの病気も治り、カイコの繭の出来も上々でした。農家のおじいさんは娘を連れてお礼にきました。神社の前に来ると、娘は急にひとりで拝殿の方に入っていきました。ヘンだと思ってみていると、娘は白蛇に姿を変え、中に消えてしまいました。驚いておじいさんは一部始終を神主さんに話しました。「それは神様が私の娘に姿を変え、手伝いに行ったのだ。日頃よく信心するおかげだ」と神主さんは言いました。
それからこのことが評判になり、皇武神社のお札は「おきぬさま」と言う人形と一緒に、もらいに来る参拝の人で賑わったそうです。
座間美都治
相模原民話伝説集より